パワハラやセクハラ、浮気の証拠を集める時には相手にばれないように許可なくボイスレコーダーを使って音声を記録するということもあるでしょう。
しかし、こういった手段で録音された音声は、証拠として容認されない場合があります。
今回は、ボイスレコーダーの証拠としての有効性について紹介します。
□刑事裁判におけるボイスレコーダーの有効性
刑事裁判では、「違法収集証拠の排除法則」という原則があります。
相手の許可なく録音する行為を秘密録音と言いますが、こういった手段で収集したものは証拠として容認されない可能性が高いです。
□民事裁判での判断基準とは?
刑事裁判では秘密録音が証拠として容認されない可能性が高いことを紹介しましたが、民事裁判では原則上は、証拠能力に対して制限はないとされています。
民事裁判で秘密録音が証拠として容認される時の判断基準は以下の2つです。
*人格権を著しく反社会的な方法で侵害していないこと
著しく反社会的な手段というのは、脅迫や暴力、不法侵入といった法を犯した行為によって録音されたものというのが挙げられます。
このような手段で録音したものは民事裁判でも証拠として容認されない可能性が高いです。
*録音する時の違法性や証拠がもつ価値などを総合的に考慮
録音時の違法性や証拠がもつ価値などについても総合的に判断されます。
この判断基準によって証拠としての能力を判断された事例が東京高裁平成28年5月19日の判決です。
この判決では、大学の教員である上司から部下へのパワハラやセクハラについて録音したものについての証拠能力を判断しています。
この音声は、録音がはっきりと禁止されている大学のハラスメント委員会での審議を秘密録音したものでありました。
ハラスメントという極めてセンシティブな内容について審議する特性上、審議の非公開、委員の守秘義務、録音の禁止というような委員会の運用に背いた形で録音されていると判断されたことから、この録音については証拠能力が容認されませんでした。
この事例のような判決は「信義誠実の原則」に基づいているとされています。
信義則と略されますが、民事訴訟の手続きを行う過程で求められるほどの信頼を裏切るような訴訟行為をしてはいけないという意味合いになっています。
□まとめ
ボイスレコーダーの証拠としての有効性について紹介しました。
相手の許可なく録音した場合、刑事裁判では証拠として認められず、民事裁判でも容認されないことがあります。
ボイスレコーダーを使って録音する時には、法律に違反することがないような形で録音するようにしましょう。